妊婦は毛染めしないほうが良い？ヘナなら大丈夫？安全に白髪を染めるなら-美髪ラボ

妊娠すると、身体がそれまでとは大きく変化します。
髪質の変化もその一つで、髪がとても元気になり抜け毛がほとんどなくなるものの出産後に白髪や抜け毛が増えることもあれば、その逆で妊娠中白髪や抜け毛が増えることもあります。

この差はどういうことなのでしょうか。
そして、白髪が増えた場合染めても大丈夫でしょうか。
原因と対策についてご紹介しましょう。

妊娠中に白髪が増える理由

妊娠は、女性の身体が最も大きく変化する大イベントの一つです。
ホルモンの分泌量に変化が起こり、それが様々な症状を生み出します。
その一つが髪の状態や質の変化です。

妊娠が髪に与える影響は？白髪の原因とは

妊娠すると生理が止まり、女性ホルモンが一気に増えます。
女性ホルモンにはエストロゲン（卵胞ホルモン）とプロゲステロン（黄体ホルモン）がありますが、妊娠後すぐ増え始め、20週あたりから両方とも大量分泌されるようになります。

エストロゲンは女性らしい身体を作り、妊娠期に受精卵が着床する子宮内膜を厚くする働きがあり、さらに母乳を出す準備のために、出産まで増え続けます。
プロゲステロンは妊娠を継続させるために必要なホルモンで、妊娠すると基礎体温を上げ、妊娠初期には胎盤を作ります。
その後も胎児の成長をサポートし、流産の危険から母体を守ります。
この両方のホルモンが増えることによって、安全に出産することができるのです。

この2つのホルモンは、どちらも髪の成長に大きく関わっています。
エストロゲンには頭皮や髪の健康を維持する作用で髪の毛の寿命を伸ばし、プロゲステロンはエストロゲンの働きを促進するといわれています。
女性のヘアサイクルが4～6年なのに対し男性が3～5年で、男性のほうがはげやすいのは、女性ホルモンの分泌量の差から来ているのです。

妊娠して髪の健康を維持する女性ホルモンが増えるので、多くの女性は抜け毛が減り、白髪が増えることもありません。
ところが、中には急に白髪が増えたり抜け毛がひどくなったりする場合があります。
この原因は解明されていませんが、以下の理由によるものと考えられています。

①ホルモンバランスが安定しない

妊娠初期に多いのが、女性ホルモンの分泌量が安定しないことによるものです。
女性ホルモンは一生涯でスプー1杯分しか分泌されないといわれており、ほんの少しバランスが崩れるだけで大きな変化をもたらします。

特に妊娠初期は精神的にも安定しないため、それがホルモンの分泌量に影響し、白髪を増やすのではないかといわれています。

②つわりで栄養が偏る

つわりでほとんど栄養のあるものが食べられなくても、胎児は貪欲に母体の栄養を摂って成長します。
すると髪の成長に必要なタンパク質（アミノ酸）、ビタミン、ミネラルが大幅に不足するため、白髪や抜け毛が増える原因となるのです。

特に妊娠初期は胎児の成長のために葉酸が必要ですが、葉酸は髪の毛の色素を作るために重要な働きをするため、お腹の中の赤ちゃんに与えてしまうと白髪になりやすくなります。
また、亜鉛が不足すると胎児の成長不良や奇形を起こすといわれていますが、亜鉛は白髪の予防改善のためにも必要であることが知られています。
そのため、不足すると白髪の原因となるのです。

さらに、タンパク質も胎児の身体を形成するために不可欠ですが、タンパク質は髪の毛を作る主成分でもあり、つわりで食べられなくなると細毛や抜け毛、白髪が増える可能性があります。

③炭水化物の摂り過ぎ

つわり後やたらにお腹がすくようになり、暴飲暴食してしまうことがあります。
そんな時、ついつい手軽なお菓子やジャンクフードばかり食べていると、炭水化物（糖質）の摂り過ぎを招いてしまいます。

糖質をエネルギーに変換するためにはビタミンB群が必要ですが、ビタミンB群には肌や髪を健康に保つ働きがあります。
そのため、糖質を摂り過ぎると髪や頭皮に必要なB群がエネルギー代謝のために使われてしまい、白髪や薄毛につながることがあるのです。

④睡眠不足による成長ホルモンの分泌不足

妊娠5か月頃から睡眠不足になる女性が増えます。
これは胎動や足のつり、腹部の圧迫とそれによるトイレの近さなどによるもので、質の良い睡眠が取りにくくなってきます。

ところが髪の成長や細胞の修復に必要な成長ホルモンは、熟睡中でないと十分に分泌されないことがわかっています。
睡眠不足だったり熟睡時間が短くなったりすると、成長ホルモン不足で髪の色素を作るメラノサイト細胞の新陳代謝がうまく行かなくなるため、白髪になりやすくなります。

⑤ストレスによる血流悪化

妊娠中はホルモンバランスが崩れ、精神が不安定になりがちです。
さらに、様々な育児方法の情報に振り回されたり身体の自由が利かなくなってきたりするので、ストレスが溜まりやすくなります。
すると自律神経が乱れ血流を悪くしてしまうため、髪に十分な栄養が届かなくなり、白髪が増えてしまうことがあるのです。

また、ストレスは活性酸素を発生させます。
活性酸素は細胞を酸化させる働きがあり、メラノサイト細胞の機能が破壊されて黒髪が作れなくなり、白髪が増える要因となります。
 
このように、妊娠中はそれまでと違うことが多く起こります。
これらが重なることで女性ホルモンの大量分泌にも関わらず、白髪が増えてしまうことがあるのです。

妊婦は白髪を染められない！？

妊娠中に白髪が増えると、染めたいと思う反面赤ちゃんに良くないような気もしますね。
こんな時はどうしたら良いのでしょうか。

「妊娠中の毛染めは胎児に影響あり」「特に問題ない」、どっち？

妊娠中に毛染めをして良いかいけないか、これは様々な意見があり、正解は出ていません。
あるプレママ雑誌には全く胎児に影響がないと書いてありますし、QAサイトで質問した妊娠中の女性に対し、多くの経験者が「染めたけれど、生まれた子供には特に影響なかった」と回答しています。

その反面、ある助産婦さんは「胎盤からヘアカラーのにおいがした」という経験を何度もしているそうです。
また、日本ヘアカラー工業会（JHCIA）では、妊娠中は頭皮や皮膚が過敏な状態になりかぶれを起こしやすいため、ヘアカラーをしないように、と提言しています。

現在のところ、妊娠中の毛染めによる流産率や赤ちゃんへの悪影響について、医学的に証明されたデータはありません。
しかし、ヘアカラー製造企業で構成されているヘアカラー工業会がヘアカラーをしないように、と言っているのですから、やはりしないに越したことはありません。

それに、美容院で染めるとすると長時間拘束されますから、ニオイに敏感になっている時期はつらいですし、体勢を変えずにいるのもキツイです。
施術中にトイレに行きたくなっても、なかなか言い出せないこともありますよね。
かといって自宅染めも準備が大変ですし、市販のヘアカラーは美容院のものより薬剤が強いため、さらにトラブルが起きやすくなります。

なお、この問題については欧米でも古くから取り上げられていますが、やはり医学的なデータはなく、問題ないという意見と危険という意見両方があります。

ただ、「ケミカルダイ（2剤式白髪染めやおしゃれ染め）が有害だという証拠はないが、同様に安全だという証明もまだされていない」という考えが主流になりつつあります。
高名なアメリカの美容家ジョン・マスターズ氏の美容室では、美容師と顧客の健康のために刺激性の強い酸化染毛剤の使用を禁止しているということです。

これらを総合すると、やはり2剤式のヘアカラーで染めるのは控えたほうが安心ではないでしょうか。

最も心配な経皮毒についての見解は医師によって異なる

「経皮毒」というのは、皮膚に塗られた有害物質が吸収されてしまうことで、2005年に竹内久米司という薬学博士が初めて書籍で公表した概念です。
それによると、

とされています。

しかし、竹内氏が医師でも薬剤師でもないことや経歴に不明な点があること、データソースが不明であること、さらに経皮毒に関して世界的に研究がされているものの、まだ信頼するに足る研究結果が出ていないことから、医師によっては経皮毒そのものを否定しています。

これは、経皮毒の蓄積には時間がかかるとされ、何らかの症状が出た時に原因を突き止めることが困難だからです。

また、西洋医学の理論に照らし合わせ、人間には防御・解毒・免疫のシステムがあるので、たとえ経皮毒があったとしても排出されるので問題はないはずだ、という意見もあります。

もちろん、医師によっては経皮毒の存在を認めています。
それは、たとえばステロイドホルモンを顔に塗って、他の部分に副作用が出るようなことが現実に起きていることを、実際に経験しているからでしょう。

このように、医師の間でも意見が統一されていませんので、色々なところから情報を集めたり自分の経験を思い出したりして、自分が納得する回答を見つけるしかありません。

ただ、毛染めの成分に関してはある程度研究されており、特にパラフェニレンジアミンという酸化染毛剤に発がん性があり、アレルギー発症原因となることもわかっています。
発がん性に関してはEU諸国の調査で確認されていて、すでにEUでは使用禁止になっています。
また、同じくパラフェニレンジアミンがアレルゲンであることは日本国内でも以前から判明しており、旧表示指定成分になっていいるのです。

発がん性やアレルゲンと経皮毒が同じ経緯かどうかはわかりません。
しかし、少なくとも頭皮への塗布によって酸化染毛剤が触れた部分だけでなく、体内でも危険な状態を引き起こすという点では同じなのです。

妊娠中は肌が敏感に。2剤式ヘアカラーでトラブルを起こす人も

経皮毒があるにせよないにせよ、やはり2剤式の毛染めは妊娠中には控えたほうが安心です。
これは、肌が敏感になっている、あるいは体調が万全でない時は毛染めの成分にかぶれやすくなるからです。

特に2液に配合されている過酸化水素（ブリーチ剤）は元々肌に対する刺激が強いため、肌が敏感になっているとかぶれやすくなります。
さらに、つわりなどによって身体が弱っているとアレルギーを発症しやすくなるため、パラフェニレンジアミンによって頭皮だけでなく顔や全身が皮膚炎を起こす危険性が高まるのです。

どうしても染めたい時はホームカラーではなく美容院で

白髪がどんどん増えているのに染めないというのはつらいものですが、少なくとも肌が過敏になっている時は、自宅で染めるのは控えたほうが良いでしょう。

どうしてもしっかり染めたい、という場合は美容院で染めてもらいましょう。
知識や技術のある美容院では頭皮に極力つけないように塗ってくれたり、ダメージの少ない酸性カラーをすすめてくれたりします。
また、ハイライトやローライト、グラデーションなど、頭皮に薬剤がつくのを極力防げ、かつファッショナブルな3Dカラーリングもありますよ。

なお、美容院で染める時は、事前に美容師に妊娠中であることを伝えておきましょう。
気分が悪くなった時にすぐ対処してくれたり、シャンプーの時にお腹に負担がかからないように気をつけてくれたり、お手洗いに行きやすい席を取ってくれたりと配慮してくれます。
美容師のほうでも知っておいたほうが細かい気配りができるので、予約の際に一言言っておいてほしいそうですよ。

ヘナは植物だから大丈夫！？

さて、2剤式のヘアカラーに含まれる化学物質が良くないなら、天然植物のヘナで染めれば大丈夫でしょうか。
インドで古くから使用されていたものですから、安全性は高そうですよね。

絶対に安全とも危険とも言い切ることはできない

確かに、ヘナはインドで数千年前から使用されてきたハーブです。
しかし、妊娠中に使用して良いかどうかは、紀元前15世紀頃から数十世紀にも渡って編纂されてきたインド伝承医学アーユルヴェーダの経典にも記載がないのです。
そのため、ヘナ研究家の多くは「自己判断で」使用するように勧めています。

また、ヘナではオレンジ色にしか染まらないため、黒く染めるにはインディゴ（木藍：もくらん）も使用しなければいけません。
ところがインディゴは時々植物アレルギーを引き起こすことがあります。
そのため、ヘナ100％では問題がなくても、インディゴを使用するとかゆみや発疹が出る可能性があります。

市販されているヘナには危険な商品も多い

ヘナで一番危険なのは、「ヘナ100％」と書かれていても、実際にはそうではないものが非常に多いということです。
インドのヘナ工場には、近代的な装置が所狭しと設置されているところから、犬や牛と共存しているような倉庫まで色々あります。

すべてを機械で作業し、酸化染毛剤などの化学薬品を投入しているところもあれば、ヘナに似た色の草や動物の糞を平気で混ぜているところもあります。
中には、ケズリという見た目や色が似た植物の葉と化学物質だけでできているものも流通しているのです。

また、ヘナ100％でも品質の悪いものや枯草状態になったものを混ぜているメーカーも多く存在します。

ヘナは天然植物ですから、その年の気候の影響を強く受け、品質が低下したりすることも多いのです。
さらに、ヘナは栽培地域や採取の時期や時間などによっても品質に大きな差が出る植物なので、不良ヘナで作られたものはカラーリング作用がとても弱くなってしまいます。

日本の取り扱い業者には、こういった事実を知っている会社もあれば、インドの業者に騙されている場合もあります。
自社で買い付けを行なっている企業のヘナは信頼できるものが多いのですが、美容院で扱っているものの中には、パラフェニレンジアミンなどの酸化染毛剤が配合されていることが多いといいます。

こういったことは素人が目で見て判断できるようなものではないので、特に肌が敏感な妊娠時はヘナの使用は慎重にしたほうが良いでしょう。

時期によってはニオイで気分が悪くなることも

もう一つ、ヘナにはニオイという問題があります。
商品によって差はあるものの、ヘナには独特な枯れ草のニオイがあります。
妊娠していなくても気になる人が多いこのニオイに、妊娠中耐えられるかどうかわかりません。
しかも、染めた後も数日髪にニオイが残るのです。

ヘナを妊娠中試したい人は、少量を購入してまずは作ってみて室内に置き、そのニオイに長時間耐えられるか試すようにしてくださいね。

ヘナには身体を冷やす作用があることも心配

ヘナには多くの効能がありますが、そのうちの一つに体温を下げるという作用があります。
そのため、妊娠中に使用すると身体を冷やしてしまう危険があります。

また、ヘナは婦人病にも作用し、生理不順の改善やPMS（月経前症候群）を改善し血液の流れを良くする通経効果があるといわれますが、その作用によって流産の危険性も考えられます。
さらにデトックス効果の強いハーブですから、身体が弱っている時などは悪いほうに作用してしまい、最悪の場合流産の危険性もあるのです。

インドという日本とは全く気候の違う土地で育ったものですから、インド人には起こらない症状が日本人には出てしまうかもしれません。
ヘナが日本に入ってきてからまだたったの20年程度ですし、使用者も限定されていますから、まだわからない作用がたくさんあるのです。

それでも白髪を染めたい！という場合には・・・

2剤式の毛染めは怖いけれど、染めないとあまりにみっともないと気にする気持ちもわかります。
しかしヘナもダメとなると、どうしたら良いのでしょうか。

「自分は大丈夫！」という人は自己責任で

妊娠中にヘナを使用して全く問題がなかったという人もたくさんいます。
ですから、妊娠中に白髪が目立つ場合は、自己責任で選択肢の一つとして考えても良いと思います。
特に、これまでもヘナを使用してきた人であれば、「いつもと何となく違う」ということが感覚としてわかるはずです。
逆に、初めてヘナを使用する場合はそういった感覚がわからないので、たとえ自己責任でもおすすめしません。

また2剤式の白髪染めがクリーム状なのと違い、ヘナは粉なので、まず自分でクリーム状にするところから始めなくてはいけません。
その後、髪を細かくパーツ分けして根元から髪が見えなくなるほどたっぷり塗り、1～3時間放置してから洗い流すという手間がかかります。
その間、独特なニオイに耐えなければいけませんし、ヘナにはリラックス作用があるため、最初のうちは急に眠くなる、ふらふらする、疲れて寝込む、数日間だるいといったことがよく起こります。

ちなみに、ヘナは髪が傷んでいる人が使用すると、最初のうちはかなりきしみやパサつきが出ます。
これは非常によくあることで、通称「ヘナショック」と呼ばれています。
何度か使用しているとしなやかになって来るのですが、妊娠中に毎回数時間かけて、しなやかになるまで頑張れますか？

ヘナの臭いがダメな人はカラートリートメントで

ヘナの独特なニオイはダメ、でも白髪をそのままにはしたくないという人は、一度ヘアカラートリートメントを試してみてはいかがでしょうか。

カラートリートメントは安全性の高いHC染料と塩基性染料を使用しており、酸化染毛剤のような旧表示指定成分ではありません。
また、アルカリ剤や過酸化水素も配合されていないので、妊娠中の敏感な肌への刺激もほとんどありません。
お腹が大きくなってきて、染毛料を洗い流しているうちに姿勢が崩れ顔や身体にかかったとしても、心配しなくて良いのです。

さらに、高品質なカラートリートメントには頭皮環境をよくする作用のある成分が配合されているので、血行が良くなり白髪改善にもつながります。

しかも、香りにもこだわっている商品が少なくありません。
天然のエッセンシャルオイルやエキスを使用しているものもあれば、あえて無香にして誰にでも使いやすいようにしてあるものもあります。
よほど嗅覚が敏感な時期でなければ、安心して使用できますよ。

もう一つ、カラートリートメントの多くは普通のトリートメントやコンディショナーと同じような使い方ができます。
シャンプー後に塗って5～15分程度放置するだけで色が徐々に入っていき、早ければ3回程度で自然な染め上がりになるので、とても手軽なのです。

染める前には必ずパッチテストを行いましょう

カラートリートメントは安全性が高いのですが、妊娠中は身体がデリケートになっているので、かぶれなどの症状が出ることがあります。
そのため、事前にパッチテストを行なうようにしてください。

なお、商品によってはテストは不要と書かれているものもありますが、万が一のことを考え、やはり行なうことをおすすめします。
また、主治医にも相談したほうがより安心ですね。

 
妊娠中に白髪が増えるのは、それが一時的なものだとしてもとても嫌ですよね。
かといって、ほとんどが化学成分で作られた2剤式のヘアカラーの安全性は証明されていません。
大切な赤ちゃんを万が一の危険にさらさないためにも、カラートリートメントで染めることをおすすめします。

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